天声人語も勘違い? 船内感染はいつ増えたか分からない
2020-02-22


<当初は米国や国際機関も、乗客を船内に待機させるという日本の方針に理解を示していた。しかし感染者の急増で見方を変える。「状況は変化し、船内で予想以上に感染が広がったのは明らかだ」と世界保健機関は指摘した>
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 WHOが間違えている事もあるので、原文らしき物を探すと、2/21日付のワシントンポスト。WHOのライアン・ディレクターは、「船内での感染が予想よりはるかに広まっていた」(clearly there's been more transmission than expected on the ship.)と言っているだけで、日本政府が船内に乗客を閉じ込めて検疫や対策を始めてから感染者が急増しているなどとは言ってない。
 香港人の感染者が乗り込んできたのが1/20。下船が1/25。香港政府が感染判明を発表したのが2/1深夜。検疫を始めたのが2/3。感染者やその接触者は2週間以上、船内で自由に行動していたことになり、その間に感染がかなり広まっている可能性が高い。もちろんその後もゼロに抑える事はできてないだろうが。
 単純なモデルで船内の感染者はいつ増えたのかシナリオを2つ作ってみよう。
最初は1人だった感染者が約1カ月で600人ぐらいになっている。

シナリオ1 対策を取る前も取ってからも感染の速度は変わらず、対策は全く機能していない場合

 1/20に初めの感染者が乗船してから、3日で2倍の勢いで感染者が増え続けているとすると、感染が判明した2/1に16人、検疫が始まった2/4ごろに32人。その後も同じペースで増え続け、2/16に512人なる。
 つまり、検疫が始まった時には20人程度だった感染者が無為無策なまま増え続け、約2週間で20倍以上に増えてしまった。

シナリオ2 対策を取る前は急激だった勢いが、対策で10分の1の増加速度に抑えられた。

 1/20に初めの感染者が乗船してから、1.5日で2倍の勢いで感染者が増え続けているとすると、感染が判明した2/1に256人。その後は対策によって、15日で2倍までペースが落ち、2/16に512人になる。
 つまり、検疫が始まった時にはすでに300人ぐらいまで膨らんでいた感染者の増加を押さえ込んだが、それでも2週間後には2倍になってしまった。

 感染研のデータを見ると、シナリオ2の方が近い気がする。つまり、感染の対策を始めた時点でまだ感染者が少なければ、対策は効果的に機能するが、すでに予想以上に増えてしまっていた場合、どうしたって増加は抑え込めない。もちろん、何もしないよりはずっとマシだが。
 ライアンの言いたい事もそういう事ではないかと。「その時は想定外だった状況に対して、事態が分かってからもっとこうすればよかったと言うのは誰でも簡単にできる」と。
“Obviously, the situation on the ground changed, and clearly there’s been more transmission than expected on the ship,” said Michael Ryan, a WHO executive director for health emergencies. “It’s very easy in retrospect to make judgments on public health decisions made at a certain point.”
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 対策に関しては仕方なかったとしても、政府・厚労省の広報戦略は大失敗だ。
 政府・厚労省は、まるで、「2/5時点では船内の感染者が10人しかいなかったのに2/19までの2週間で一気に620人に増えた」と全世界に誤解させるような発表の仕方をしてしまった。また、全員検査の方針になかなか切り替えず、なし崩し的に1000人、2000人と検査数を増やしていった。態勢的に無理だったかもしれないが、それでも無理にでも早く全員検査をしておけば待機中に増えたのか、それ以前からすでに蔓延していたのか区別がついた。
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