海鮮丼は酢飯と白飯どっちが正当か論に終止符を打つ!
2025-05-01


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ネットで海鮮丼の白飯派と酢飯派のせめぎ合いを見かける。大抵の人が「どっちでも好きな方を好きなように食べればいいじゃん」という態度だと思う。が、「本来は○○の方が正当」、「海鮮丼の王道は○○」と王道や正当を持ち出されると、そっちじゃない方を好きな人が「□□は邪道ではない」と反発するというシステム。
 海鮮丼の起源については、定食屋発祥説と寿司屋発祥説がある。
 北国の漁師町で、地場で捕れる海産物を漁師や町の人が丼飯に乗せて食べていたのが定食屋のメニューになったという説。定食屋には酢飯がないのが普通だから、定食屋起源なら当然白飯海鮮丼だったはず。
 一方、江戸前の寿司屋のちらし寿司が発展して生まれたという説。当然、寿司屋にある酢飯を使った酢飯海鮮丼だったはず。
 日本人は食文化のルーツ、どの店で誰が発明したかに関するこだわりが非常に強い国民だ。いまだに定説がないということは、特定の店で誰が発明したということはなく、同時多発的に発生し、定食屋発祥と寿司屋発祥の両方が独立にあったのだろう。
 寿司屋で海鮮丼というものがあるから、定食屋でも白飯で作ってみようと真似したなどということはなく、定食屋で海鮮丼というメニューがあるから、寿司屋でも酢飯で作ってみようと真似したということもない。どちらかがルーツでもう一方が導入した物ではないってことだ。
 白飯派からよく出てくる理屈は、「海鮮丼の白飯を酢飯にしたら、それは海鮮丼ではなく、ちらしになる」というもの。酢飯の海鮮丼はちらしと同じであり、海鮮丼ではなく、海鮮ちらしなどと呼ぶべきだということだ。
 これは寿司を知らない人の理屈。
すし技術教科書<江戸前ずし編>によると、江戸前のちらしずしとは「すし飯の上に種々の具をちらしたもの」だ。「にぎりずしの場合には、タネに一定の寸法があるが、ちらしにはきまりがないので、にぎりずしには半端な部分や手クズを利用することができる」と書いてある。
 また、「ちらしに入れるタネには、握りのタネにならない半端や手クズをできるだけ活用する。そこで、手クズや半端のタネを、体裁よくみせるためには、切りっぱなしにしないで、少し飾りの包丁を入れる工夫が必要だ」ともある。
 「とくに形のきまりはないが、一般的なちらしは、丸か角の塗りの蓋物を用いるのが普通である」という記述もある。
 さて、「寿司屋が始めた海の丼・海鮮丼フランチャイズの丼丸」というテイクアウト専門店のサイトを見ると、海鮮丼とちらしの両方がメニューにある。そこで、買いに行ってみた。どう違うのか聞くと、「生の魚介だけを使ったのが海鮮丼、卵焼きや煮物など火の通った具材も使っているのがちらし」だそうだ。
 まとめると、ちらしと酢飯海鮮丼を見分けるには、

1)形や大きさに決まりのない具材を酢飯の上に散らしてあるのがちらし。形や大きさをそろえて切った刺し身などの具材を盛りつけてあるのが海鮮丼。
2)飾り切りなど具材に寿司職人の技を入れているのがちらし。切っただけなのが海鮮丼。
3)火の通った具材も使うのがちらし。生の魚介だけを使うのが海鮮丼。
4)塗りの蓋物を使うか、丼を使うか(丼も蓋をすれば蓋物だけどね)。

といくつかのポイントがある。すべてが同じ一方になっていれば、ちらしか酢飯海鮮丼かはっきりするが、混合だとどっちとも言え、店によって判断が違ってくるわけだ。
 元々のちらしは、半端や手クズを使っていたから握りより低価格でお得なメニューだった。しかし、世の常で、ちらしもわざわざそのために具材を用意するようになり、最初は小さかった具材も大きく、豪華になり、値段が上がるとともに、大きいので具材を酢飯の上に散らしにくくなる。そうやって生まれたのが酢飯を使う寿司屋の海鮮丼だろう。

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