コロナの飲み薬 構造見る限り期待できそうにない
2021-06-14


禺画像]
新型コロナウイルス初の飲み薬(といっても、コロナで承認されている抗ウイルス薬はレムデシビルしかないが)ということでニュースになっていたが、構造式を見る限りほとんど期待を持てない。このモルヌピラビルも、レムデシビルやアビガンも、元は抗がん剤だ。そして、帯状疱疹の特効薬アシクロビルも、C型肝炎の特効薬も、HIVのAZTも、みなそうだ。これらはDNAやRNAの合成を邪魔するため、がん細胞の増殖を抑える。同じ仕組みでウイルスのDNA、RNA合成も妨げる。原理は簡単で、DNAやRNAそれぞれの4種類の部品のどれかに似た化合物。モルヌピラビルはRNAの部品A、G、U、Cのうち、Cのシチジンによく似た化合物です。RNAを作る酵素が正規の部品と間違えて作りかけのRNAにつないでしまうため、正常なRNAができなくなってしまう。しかし、正常な細胞の酵素のRNA合成も妨げ、細胞に対して毒性がある。そこで、ウイルスの酵素のみに作用するようにいろいろ工夫する。シチジンの類似化合物では、例えば、B型肝炎やHIVで使うFTCがあり、イオウ(S)やフッ素(F)で炭素(C)を置き換えている。何より大きな特徴は右手と左手で持つ物がシチジンと逆になっている。細胞の酵素はこの鏡に映したような右手系左手系を厳密に区別するが、HIVの酵素は騙されてしまう。そのため、FTCは非常に毒性が低い。
 ところが、モルヌピラビルは、構造はシチジンとほとんど同じ。これではウイルスの増殖を抑える濃度と細胞に障害を与える濃度の差を大きくできず、副作用が大きいのではないかと予想される。もともとインフル用だったが、異なるウイルスに幅広く効くということは結局いろいろ害をなすというのと裏腹だ。やはりコロナウイルス専用の薬剤を開発しないとうまくいかないではないか。
 この契約は、臨床試験の結果がよければ緊急使用許可 (EUA)か正式承認が出て、その場合は買うということ。レムデシビルと同様入院期間が短くなる程度で、死亡率が劇的に下がるとか考えにくい。何が起きるか分からないのが医学生物学だが。
 ちなみに、モルヌビラビルの 左の方にくっついているのは、細胞膜を透過させるための保護基(イソ酪酸エステル)で、細胞の中ではずれて、シチジンと同じOH基に戻る。結局、違いは、シトシン部分のNH2がNHOHになっているだけ。
◆Merck 社は,軽症から中等症の COVID-19 の治療のための経口抗ウイルス薬の治験薬候補であるモルヌピラビル(Molnupiravir)の米国政府との供給契約を発表
[URL]
[新型コロナウイルス]
[HIV]
[ウイルス]
[コロナ]
[コロナウイルス]
[新型肺炎]

コメント(全0件)
コメントをする


記事を書く
powered by ASAHIネット